輝く冬の日
「私も好きよ」
なんかそういってくっついた感じがする今日この頃、ラーダも親元に帰って、することもない。
たまにアルがくるのが幸せかなあとも思うが、幸せだが……たとえようもなく暇だった。
「ひま、ひま、ひまよおおおおお!」
暇しか言えない、仕事がないってのは暇だ。
私は本を手に、それを壁に投げつけた。いや暇で読んだけど、つまらんかったから。
「……アルってこの頃こないわよね」
まさか浮気か? とか思ったりしたが、あれにそんな甲斐性ないわね。と思い直す。
「ラーダいたころは楽しかったなあ」
うん今も幸せだけどね、とも思うが。
一番はアルがまあなんていうか、すさまじく甲斐性がなく、すさまじく奥手ということだろう。
なんかなあ二十歳越えてキスがやっとという男も珍しい。
「昔からのつきあいだからなあ」
これまで私はアルにしてみたことを、思い出す。
アルの長いさらさらの髪に触ってみたりしたが、不発。
愛の言葉すらあいつは苦手っぽいし。
「不満……なのか?」
倦怠期ってやつか、とも思う。
とりあえず暇が解消されないから、今度はアルにプレゼントしようと思っていたマフラーの続きなぞ編んでみた。
「ってかもうすぐ春なのに」
もうすぐ春なのにマフラーって……って正直思うが、でもアルって暑苦しい格好してるけど、やっぱ冬は絶対外は寒いって、と思って編み始めたのだから、完成させようとがんばっていたが、はっきりいって出来は無茶苦茶だ。
「うう、ぼろぼろ」
マフラーの毛糸がぼろぼろでている。ってかぞうきんかこれ? と私は思った。
しかしがんばらないとだめだ、と編み棒を動かしてみる。
「……ラーダは器用だったのに」
どうしてこうだめだめなんだとか思っていたら、いつの間にか夜がきていたようだ。外が暗い。
私は小さくため息をついてみる。
「おい、おいエリシア!」
「え、えってか、アル!」
「玄関の扉あいてたぞ、鍵くらいかけとけ、相変わらずお前って……どじだなあ」
「アルも声くらいかけてから入ってきてよね!」
私は慌てて座っていたソファの下に無茶苦茶の物体? を隠す。
はううう編み棒とれてるかも、とかちょっと焦りながら。
目の前に恋人? であるアルが立っていた。
つか全然なんか姿出会った頃からかわらないのねえ。と思う。
長い長い髪に、切れ長の瞳。うん、でも大好きよアルって思う。
アルフリートはふうと小さくため息をついて、私の隣にどかっと座った。
「無用心だな」
「……悪かったわね」
「変なやつでも入ってきたらどうする?」
いやつうか、変なやつっていうか、声かけないアルもアルよ。とちょっと私は思う。
「……もうすぐ春だな」
「そうねえ」
私たちは座りながら世間話をする。いやじじいとばばあじゃないから。
恋人同士なんだけどなあ、と私は小さくため息をついて思う。
うん幸せなんだけどね。ちょっと物足りない。
「エリシア……」
なんかアル、真剣よ表情が。えとえと惚れ薬飲んだときってか、告白してきたときってうか、ラーダに嫉妬してる顔みたいな。
私はちょっと焦って体を抱きしめるアルを見る。
私の体を抱き寄せ、アルは私に口付ける。珍しい、積極的だ。
「……アル」
「……もうすぐ春だが、しかしまだまだ寒いな」
「そうね」
口付けが終わり、抱擁がとかれた。
するとアルはこほんと一つ咳払いをして、そして私に向かって笑いかけた。
「まだ外も寒い」
「ええまったくもってその通りね」
「だからまあ俺も寒い」
何がいいたい、と私はアルを見て思う。
えっとあの、アル、貴方の足に何かがあたってると思う。
と私は恐る恐るアルの下の辺りを見る。
うわあああああ、編みかけているぼろぞうきんだ。と私は少し焦ってアルを見た。
「……うん……まあうん、もうちょっと……待ってね」
「……ああ」
何がいいたいのか漸くわかった。
アルごめんだけど、もう少しわかるようにいって……と私はちょっと照れたように私を見るアルを見つめた。
はあああああ、やっぱり私たちって十代の少年と少女のようだわと、ちょっとだけ思いながら。
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